アップルが描く「インテルなき未来」と、見えてきたいくつもの課題
しかし、そもそもなぜ、PowerPCからインテルのx86系に移行したのか。
アップルはなぜPowerPCを捨てたのか--元IBM幹部、4年後の告白
中の人ではないし、真相はわかりません。 しかし、私はジョブズとゲイツの信頼関係を美化しています。 よく噂される、MacとWindowsの良い関係を継続化する取り組みを信じています。
Windowsはなぜ必要なのか
今や、MacでBootcampを使えばWindowsを簡単に使うことができますし、MS OfficeであればMac用のアプリケーションが存在します。
ここ数年、MacでもWindowsに相当する作業が問題なくできていました。 この関係があるからこそ、Macを利用するユーザが増えたと思っています。
Windowsが無くなる日は当分来ないでしょう。 特に、Windowsが必要である理由の一つとして、神がかったActive Directoryの信頼性を崩せるディレクトリサービスが生まれてくる未来を想像できません。 Active Directoryによって、企業のコンピュータはシームレスに各種アプリケーションにアクセスできますし、統合的に管理することができます。
ある意味、この鎖によって、Windowsは縛り付けられているとも言えるかもしれません。 個人が所有するコンピュータであれば、Windowsである必要はないでしょう。 ただ、一部のコアなPCゲームではまだDirectXが必要な場合があるので、そういった意味でWindowsを選択するユーザもおられるでしょう。
「企業」というキーワードがあると、Windowsは必須になってしまう様に感じています。
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MacはWindowsになれないのか
Appleがインテルと別離し、独自のCPUをMacに採用するならば、短絡的に考えられるとiPhoneなどに搭載されている「Apple AXX」の様なARMアーキテクチャになるでしょう。 そうなれば、Windowsとの関係は雲行きが怪しくなるかと思いました。しかし、WindowsにおいてもARMアーキテクチャの採用には前向きな様です。
どちらかというと、ARMアーキテクチャの裾野を広げてきたAppleにMicrosoftが足並みを揃えてきたとも言えるかもしれません。
例えば、今すぐにARMアーキテクチャのMacが誕生してもWindowsの利用は継続できるでしょう。 例えば、WindowsのARMサポートが遅れてもVMwareなどの仮想環境プロフェッショナルが即座に対応を急ぐでしょう。
個人ユーザにおいて、CPUのアーキテクチャが変わったところで、大きな障害はないのではないかと考えました。 (ただし、VMWare fusion 上の Windows でDMM Game Player が起動しなかったのはショックでした) むしろ、「Apple AXX」の様なCPUを搭載したMacが登場することで、Appleがゴリ押しする「ニューラルエンジン」を活用して、Face IDを利用できるMacが登場するでしょう。 (それはWindowsにおける「Hello」のようなことなのですが)
しかしながら、「企業」で使うことを考えたときに、Macで問題ないのかと問われれば問題あるでしょう。
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企業におけるMac
企業におけるMacの利用はまだまだ、統括的でシームレスな環境は困難かなと思いましたが、最近では様々なサードパーティのサービスが存在します。 特にOneLoginの様なディレクトリサービスは便利でActive Directory無し、またはActive DirectoryへMacが参加(語弊があります)できるものです。
色々なサービスを使っているとAppleの欠点に気づくのですが、AppleのサービスにはSSO(Single Sign On)に関連するものがありません。 Appleのサービスには必ずパスワード認証(加えてMFA)を行う必要があります。 毎度毎度、これが必要で、App Storeで認証、iTunes Connectで認証とパスワード、パスワード、パスワード...です。
OneLoginなどはクラウドによって、これらを補完してくれますが、やはり企業ではオンプレミスが好まれるのも事実です。 よりセキュアと言われると、クラウドよりもオンプレミスが勝ってしまう印象です。
Macをよりセキュアに、オンプレミスで統合的に管理することはほとんど無理です。
置き換えを狙うApple
どうしてもMacを管理したいという組織はOpenLDAPなどのLDAPに関するサービスを学習し、ディレクトリサービスをカスタマイズしてMacを管理するでしょう。 さらに、今現在でもOpen DirecotryというAppleが提供するディレクトリサービスでMacをネットワークログインに対応させる方法も存在します。
Open Directoryによって、Active DirectoryライクにMacを管理できるかと思いましたが、実際には足元にも及びません。 Active Directoryは本当に偉大なのです。 (例えば、パスワード同期を含めて、Active DirectoryとG Suiteの連携なんかもできたりします)
しかし、以下の記事で書いた様にAppleは粛々と自身の欠点を補おうと考えている様です。
新しい macOS Server はいくつかの機能を廃止
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リンク先に具体的に廃止予定のサービスが記載されていますが、Open Directoryの記載が見当たりませんでした。 私は力不足に感じたOpen Directoryですが、何かしらの改善を狙っているのかもしれません。 さらに、Appleの記事ではmacOS Serverの方針を「ネットワーク上のコンピュータ、デバイス、ストレージの管理にいっそう重きを置くように変わります」と記載しています。
この言葉でActive Directoryの様なサービスの誕生を期待せずにいられるでしょうか。 AppleはAppleの欠点を補完するサービスを潰しにかかるかもしれません。 例えば、アプリ開発におけるTestFlightやメディア共有におけるQuikIO、そしてディレクトリサービスではOneLoginは大丈夫でしょうか。
近い将来、企業や組織において、Macは統合的に管理できるはずです。 その時こそが、Windowsとの決別であり、x86アーキテクチャが不要になる時です。 ほとんどのハードウェアをAppleが設計して、ほとんどのソフトウェアをAppleが提供して、ほとんどのサードパーティサービスにAppleが承認してアクセス(SSO)できる様になるのではないでしょうか。
素晴らしいプロダクトをたくさん発表するAppleですが、まだまだやるべきことが残されています。 そんなAppleから発表された様々な単語をパズルのピースの様に集めて行くと、見据える未来が見えてきてワクワクしてきました。