結局、数日たった今でもシフトがなかなか合わず、オカヤマさんに会うことができていない。 電話で済ませてもいいんだけど、なんだかこれは運命がそうさせている気がして、会って話をすべきだと感じていた。 [adsense] 家に帰ると風呂に入るよりも、夕飯をすませるよりも、テレビを見るよりもまず初めにパソコンに電源をつけた。 何をするわけでもないけど、カタカタと文字を打ち込むのが日課になっていた。 ここ最近では、ほとんど見なくてもキーボードを打てるようになったけど、小指の使い方がイマイチ慣れない。どうしても薬指でEnterキーを叩いてしまう。 そのうち小指を使えるようになるだろうと思っていたけど、なんだか薬指を使うことに慣れてしまって、変な癖になってしまった気がする。 まあ、直す気は今のところ無い。 それよりも、パソコンだと思っていたこのノート型の電子機器は、パソコンではなかった。 これはパソコンではない。ワープロだ。 これはモナが教えてくれた。いろいろなことに関心があって、物事にとても詳しい。 音楽や映画、美味しいご飯屋さん、それから肌が綺麗になる化粧品のことや髪がツヤツヤになるシャンプーのことも。 女の子が気になることだけじゃなくて、男心をくすぐる豊富な知識がモナにはある。 そこが魅力であることは誰もが納得する。 パソコンとはいろんなことができる。もちろん文書を書くこともできるし、絵を書くこともできる。 そして、プログラムを作ることもできる。 だけど、ワープロは文章を書くための専用機器なのだ。 これは文章しか書けない。ちょっとだけ、絵も描けるけど。 いずれにしろ、これでプログラムは作れない。 パソコンも持ってないのにプログラマーにはなれない。 パソコンを買わなきゃいけないんだ。 だけど、パソコンはなん十万円もする高価なもので、そんなお金は持ち合わせていない。 プログラマーにはなれない。 だけど、これもモナに教えてもらった。 「お金がない人はパソコンを自作するんだよ?」 自作パソコンでプログラムを作る。ヒビキがかっこよすぎてこれだけで胸がドキドキしてくる。 もう決めた。いろいろ手に入れたいものがありすぎる。 今まで、こんな感覚になったことはなかった。 大体のものに満足していたし、何か欲しいと思ったことはない。 この前、コンビニで見かけた新しいフレーバーのマルボロに少し興味があったけど、別に買わなかった。 基本的には今あるもので充分だった。 でも、オカヤマさんからの誘いや、モナに教えてもらったいろいろな情報が心の奥に眠っていた何かチクチクと刺激してきて。ウズウズとうずいてくる。そして、無我夢中で体が動いてくる。 ※この物語はフィクションです。 < 第4話へ戻る > 第6話へ続く